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2006年12月05日

インターネットこの10年(3)

[ Category : 自分史 ]

これまでインターネット環境の発展のあらましを書いてきたわけやが、いよいよ大洲目や。

●最新技術への対応

2001年10月にPDFファイルの読み上げに対応したPC-Talkerは、2002年末にフラッシュの読み上げに対応した。

そして2003年2月、「JAWS for Windows(IBMバージョン) Ver4.5日本語版」が発売され、こちらもPDFやフラッシュへの対応がはかられた。(英語版ではそれより前に対応していた)

さらに、2003年中頃には95ReaderもIEの読み上げ、PDFファイルの読み上げ、フラッシュへの対応などの機能が追加された。

このようにスクリーンリーダーがウェブサイトの読み上げに対応したことで、スクリーンリーダーを用いてインターネットにアクセスするユーザーが増えてきた。

一方HPRについては、PDFやフラッシュへの対応が遅れる形となった。2005年7月にHPRがバージョンアップ、HPR3.04がリリースによってようやく対応されたんや。
ただ、これらへの新技術への対応が遅れたことや、リリース当初不具合が多かったことなどもあってかユーザーの評判はいまいちぱっとしなかった。ちなみに不具合については、その後修正プログラムが公開されて改善されてきている。

ここで思うのは、HTMLで記述されたページを読み上げできればいい時代から、PDFやフラッシュといった新技術の登場により、それらを読み上げる必要が出てきたことだ。
HPRは元々HTMLで記述されたページを読み上げることを目的に開発された音声ブラウザーである。
そのために、PDFやフラッシュなど外部プログラムを必要とするファイルの読み上げは開発当初想定外だったはずである。だから対応が遅れたのも無理はない。
音声ブラウザもスクリーンリーダー的なトータルなメディアの読み上げ機能が求められるようになったのである。これも時代の流れを象徴する出来事ではないだろうか。

●全体を振り返って

今こうして10年間を振り返ってみると、たった10年でインターネット環境はずいぶんと様変わりした。
電話代を気にしながら接続時間を少しでも短くしようとできるだけ作業をオフライン(電話回線を切った状態)で行っていた時代。
サイトのURLを一々メールでリクエストしていた時代。
...
つい最近のことなのに、ずいぶんと遠い昔のように感じられる。

最近「ウェブ進化論」という本を読んだのだが、その本に
「インターネットの発展は『日進月歩』ではなく『分進日歩(ふんしんにっぽ)』だ」
というようなことが書かれていた。まさにそれを感じる。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫 著

1996年といえば、95Readerの最初のバージョンが発売された年、視覚障害者がようやくWindowsを使えるようになった年だ。
でも、その頃のWindowsは視覚障害者にとってとても使いにくいものだった。
「やっぱりWindowsなんか使いもんにならん。仕事でどうしても使わんならん場合は別として、視覚障害者やったらMS-DOSが一番ええやろう。」
「このまま世の中のパソコンがみんなWindowsになってしもたら、やがて視覚障害者はパソコンが使えない時代がくるのではないか。」
そんなことがいわれとった時代やった。

あれから10年…。
ほとんどの視覚障害者がWindowsを使っとる!!全く信じられん話や!!

もちろん、一足飛びにここまで発展を遂げたわけではない。

まず、スクリーンリーダーや音声ブラウザを初めとして、いろいろなソフト開発者の方々、研究者の方々のご苦労があった。

Windowsの開発元であるマイクロソフトがアクセシビリティ機能をWindows自信に搭載し、障害者も視野に入れた開発を始めたことも大きい。

開発元に意見や要望を出す人もいた。

どうしたらもっと使いやすくなるのか、スクリーンリーダーで使えるソフトにはどんなものがあるのだろうか…。みんなで知恵を出し合ったりソフトを試したりしながら、お互いに知り得たノウハウを交換しあって使いやすい環境を考えた。
ときには、使えるかどうかわからないソフトを思い切って購入したり、使い慣れた環境を壊してまでいろんな方法を試し、犠牲になってまでその実験結果を報告してくれるユーザーもいた。

全国にPCサポート団体もできた。10年前にはそんなものはなく、PCを習得したいと思ったら独学するか、運良く身近にPCを使っている友達がいれば教えてもらうしかなかった。

ちなみにわしは、マニュアルなどを読みながら独学した。だから今でも新しいソフトを使うときでもマニュアルを読めば何とかなる。
しかし当然わからんところも出てくるから、そういうときはメーカーや販売店に電話して聞いた。

それと幸いなことに、たまたま同じ時期にPCを始めた友人がいたので、お互いに情報を交換しあった。一緒にパソコンショップにも行って、店員にいろいろと質問したりもした。
このような友人がいたことはわしにとって非常に心のさせになった。一人でやっっとったら途中で壁にぶち当たって挫折しとったかも知れんからだ。

パソコン通信を始めてからは、フォーラム(mixiでいうコミュニティのようなもの)で質問したりもした。
また逆に、わしがわかる質問にはできるだけ答えるように心がけた。なにかおもしろいソフトを見つけたときはそれを紹介した。
こういう経験があるので、今メーリングリストでもそうするようにしている。情報はみんなで共有するものだという考えは、これらの体験から身についた。

また、こうしたフォーラムやメーリングリスト等で何人かの仲間と知り合うこともできた。そうした仲間と個人メールでもいろいろ教えあうこともある。

ここまでくるには多くの人の努力があったことを忘れてはならない。
こうして、我々は不便で苦しい時期を乗り切ってきた。

今、画像認証を初めとしていくつかのアクセシビリティを阻害する要素がある。しかし、こういった問題も何とか乗り越えていけるはずだ。それは我々のがんばり次第だと思う。

幸いなことに、一般のパソコン雑誌や新聞テレビなどでもアクセシビリティの話題が取り上げられるようになった。
ウェブアクセシビリティのJIS規格も制定され、企業や自治体のウェブサイト制作者もアクセシビリティを意識するようになってきた。
アクセシビリティ関連のセミナーも開かれている。

障害者もPCやインターネットを活用していることが少しずつ認知され始めている。
多くの人がアクセシビリティに関心を持ち始めたことは希望のもてる話である。

みんなでお互いにそれぞれの立場で取り組んでいけば、きっと明るい未来が開けるのではないだろうか。

ソフト開発まででいなくても、なにかできることがあるはずだ。

意見をまとめて、メーカーに要望を伝えることもそうだ。
アクセシビリティの必要性を社会に訴えることもそうだ。
いろんなソフトを試したり、いろんなサイトにアクセスしてみて、情報を公開することもそうだ。
初心者に使い方を教えたり、質問に答えてあげたりして、一人でも多くの人がPCを使えるようにサポートしてあげることもそうだ。
もし、まだPCをそれほど使いこなせないのであれば、とりあえず使いやすいところ、使いにくいところを見つけて意見を出してみるのもいいだろう。初心者の立場からの意見も必要だからだ。

また10年後に振り替えたとき
「障害者のネット環境は10年前に比べて格段によくなった」
といえるようにしたい。

そのために、今我々にできることは何だろうか?

投稿者 Dream : 2006年12月05日 20:13

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